学校は、
「大人たちの生き様」
を見せる場所。

教頭 三井良介
教頭 三井良介

Profile | 藤村女子中学・高等学校体育科教員。2025年4月教頭就任。体を動かすことが好きで、小学生時代は水泳とサッカー、中学では野球とバスケを経験、高校からはバレーボール一筋。大学時代に高校の後輩たちの指導をしたことから、教える面白さに目覚めて教師の道へ。前職では、不登校生徒の指導経験も持つ。体育教員だが、好きな科目は、古文と社会。社会科・情報科教員免許も保有。高校時代からよく来ていた吉祥寺は、大好きな街。

今、我が校は、第二創業期とも言える学校改革の最中にあります。僕は、生徒も先生もイキイキと楽しそうな学校にしたいんです。今いる子どもたちのためにも、未来の子どもたちのためにも「あの学校、ほんと楽しい学校だよね」「あの6年間があったから今があるよね」って、大人になって思ってもらえる学校をつくりたい。僕自身が、高校時代が本当に楽しかったから。

なぜ楽しかったか?それは、否定されなかったからだと思います。自分が何をしたいのか、何者なのかを考えられるようになったのは、高校時代のおかげだと今でも思っています。そのぐらい、中学高校時代は、人生にとって大きいもの。だからこそ、学校は、子どもたちに、社会という名の「大人たちの生き様」を見せる場所でなくてはなりません。

社会との接続を教育の柱の一つとする本校では、教員も職員も様々なキャリアを持つ人が集まっています。教員としての長いキャリアを持つ先生はもちろん、外交官、帰国子女、外資系企業やNPO法人の経験を有する教職員もいます。本校では、今、様々なキャリアを持つ教職員が、「学校教育は変わらなければならない」という共有意識を持って日々、教育や学校運営に邁進しています。

正解のわからない時代だからこそ、生徒も先生も、答え合わせを目指すのではなく、どんどん新しいアイデアも出してもらって、現状維持に満足しないで挑戦をしてほしいですね。
一方で、今までの学校のルールやシステムに当てはめなくてはならない部分もありますから、やりづらいことや改革すべきことはなんなのか、一つ一つ解決していく。これが、僕の役割だと思っています。

今年から、うちの学校は、校長、副校長、教頭は、フリーアドレスにしています。だから自然に動き回ることになって、会話が増えています。ゆくゆくは全員フリーアドレスにして、学校っぽくない風通しのいい職員室にしたいですね。そうやって、どんどん世界を広げている大人の姿を見ることで、生徒たちにはもっと、広い世界を見てもらいたいです。

教育現場はなぜ、
ICTから
取り残されているのか。

DX推進戦略室長 佐藤邦享
DX推進戦略室長 佐藤邦享

Profile | 大学時代のゼミ「ICTを活用した国語教育学」をきっかけに、ICT教育に興味を持ち、卒業後は、「授業支援クラウド」を提供する株式会社 LoiLoに就職。全国の学校や教育委員会に提案する中で、日本の学校教育のICT化に危機感を抱く。2023年、国語科教員として井之頭学園入職。現在は、DX推進プロジェクトリーダーも兼任する。

僕が入職した当時は、教室に電子黒板もなく、「とりあえずiPadが導入されているだけ」という状況でした。GIGAスクール構想の標準に満たない環境を「どうにか変えていきたい」と焦りましたが、教員として業務を全てこなしつつ、機材購入やICT活用の研修を先生方に開催するのは至難の道でした。学校特有のスピード感のなさにも苦労しましたし、このままでは全て中途半端で終わってしまうという危惧がありました。

そんな中、2024年からスタートした本校の改革において、「英語」とともに「デジタル教育」が3つの共通言語のひとつになり、「DX推進室」という専門部署も発足しました。中々進まないもどかしさもありましたが、学校改革にようやく本気になったという覚悟を現場で感じています。

現在、井之頭学園のデジタル教育は、技術習得だけでなく「クリエイティブ」をキーワードにしています。プログラミングに始まり、3DCGやアプリ制作を通して「創りながら学ぶ」デジタルクリエイティブです。

例えば3Dデザインの授業では、Tinkercadというアプリを使ってオブジェクトを操作しました。ゲーム開発や建築設計、雑貨のデザイン開発など、さまざまな分野で活用されている技術です。初めての取り組みでしたが、尻込みする生徒はひとりもおらず、クラス全員が、楽しさと真剣さの入り混じった表情で、3Dデザインにチャレンジする風景は、感動しました。授業が終わっても、全員がiMacの前から離れず操作し続けていたほどでした。

Adobeの調査では「『自分には創造力がない』と思う人の63%は、小学校高学年から中学生の間で自信を失っている」という結果が出ています。僕は、ここにデジタルでテコ入れをしたい。誰でも使えるテクノロジーの体験に中1から取り組むことで、クリエイティブのハードルが下がり、自身の可能性や興味に気付くチャンスが広がるはずです。「創造力がない…」ではなく、デジタル技術で壁を乗り越えて「もっとやってみたい」「挑戦したい」へ。そう感じられるような経験を、中学1年生から積み重ねてほしいと思っています。